信州とは現在の長野県の旧国名である「信濃国（しなののくに）」に由来する呼び名です。今日でも長野県の別称として広く使われており、美しい山岳風景や温泉、歴史的な街並みなど多くの魅力を持つ地域です。
本記事では信州の位置や歴史的背景、見どころなどを詳しく解説し、「信州はどこか」という基本的な疑問から秘境や観光スポットまで、信州の全体像を明らかにします。
信州とはどこの県か
結論から言うと、信州は長野県のことです。しかし、単純に現代の行政区分としての長野県と完全に一致するわけではなく、歴史的・文化的な背景を持った地域名称です。
信州の位置と範囲
信州（長野県）は日本の中部地方に位置し、本州のほぼ中央に位置します。東京から西に約200km、面積は日本で4番目に大きい県です。北は新潟県、東は群馬県と埼玉県、南は山梨県と静岡県、西は岐阜県と富山県に接しています。
信州は地理的に見ると、日本アルプスと呼ばれる高山地帯に囲まれた盆地や谷間に広がり、日本列島の背骨とも言える中央高地の大部分を占めています。この地形的特徴から「日本の屋根」とも呼ばれています。
また信州は日本を東西に分ける分水嶺があり、千曲川（信濃川）は日本海へ、木曽川は太平洋へと流れ、水系の分岐点となっている特徴的な場所です。
長野県の地域分類
長野県（信州）は一般的に以下の4つの地域に分けられることが多いです：
- 北信（ほくしん）：長野市、飯山市などを含む地域
- 東信（とうしん）：上田市、佐久市、軽井沢町などを含む地域
- 中信（ちゅうしん）：松本市、安曇野市、諏訪市などを含む地域
- 南信（なんしん）：飯田市、伊那市などを含む地域
これらの地域はそれぞれ独自の文化や風土を持ち、方言や食文化などにも違いが見られます。このような地域分類は行政上の明確な区分というわけではありませんが、地元の人々の間では日常的に使われている区分です。
信州地方の地図と隣接県
信州（長野県）は内陸県であり、海に面していません。東京を含む関東地方、名古屋を含む中京地方、新潟を含む北陸地方の間に位置しています。地図で見ると、細長い形状をしており、北部から南部まで約200kmにわたって広がっています。
隣接する県は全部で6県あり、以下の通りです：
- 東側：群馬県、埼玉県
- 南側：山梨県、静岡県
- 西側：岐阜県、富山県
- 北側：新潟県
この地理的位置により、信州は古くから東西交通の要衝として重要な役割を果たしてきました。中山道や北国街道、塩の道など複数の主要街道が通っていたことも、信州の歴史と文化の多様性に貢献しています。
信濃との違い：歴史的背景
信州と信濃はどちらも同じ地域を指しますが、使われる文脈に若干の違いがあります。
「信濃」は古代からの国名である「信濃国」に由来しています。奈良時代の律令制度下で設けられた国の一つで、現在の長野県とほぼ同じ範囲を指していました。
一方、「信州」は信濃国の「州」表記で、中国の行政区分に倣って日本の国を「州」と呼んだことに由来します。たとえば、「伊予」が「伊予州」と呼ばれたように、「信濃」も「信州」と呼ばれるようになりました。
明治維新後の廃藩置県により、1871年（明治4年）に信濃国は「長野県」となりましたが、今日でも「信州」という呼び名は広く使われています。特に観光や物産、文化的な文脈では「信州そば」「信州味噌」など、「信州」の名称が積極的に使われています。
歴史的に見ると、「信濃」という名前の由来には諸説あり、「科野（しなの）」という古い地名に由来するという説や、アイヌ語の「シナイ（寒いところ）」から来ているという説などがあります。
まとめると：
- 信濃：古代からの正式な国名（信濃国）
- 信州：信濃国を「州」として表現した呼び名
- 現在は両方とも長野県の別称として使われる
特徴
美しい自然と観光スポット
信州の最大の特徴は、その豊かな自然環境です。日本アルプスと呼ばれる山々に囲まれ、日本の代表的な山岳リゾートとしても知られています。
特に北アルプス（飛騨山脈）、中央アルプス（木曽山脈）、南アルプス（赤石山脈）の三大アルプスが県内にあり、3,000m級の山々が連なる壮大な景観を楽しむことができます。これらの山々では、ハイキングや登山、スキーなどのアウトドアアクティビティが盛んです。
上高地は特に有名な観光地で、梓川の清流と穂高連峰の絶景が多くの観光客を魅了しています。また、志賀高原や白馬などは国際的にも知られるスキーリゾートとして人気があります。
県内には多くの高原があり、霧ヶ峰、美ヶ原、車山高原などでは、夏には涼しい気候と花々が広がる草原を楽しむことができます。
また、諏訪湖や野尻湖などの湖や、千曲川（下流は信濃川と名前が変わる）をはじめとする河川など、水資源も豊富です。
信州の歴史と文化
信州は古くから東西の交通の要衝として栄えてきた歴史があります。中山道や北国街道などの主要街道が通り、宿場町として発展した地域も多くあります。中山道の木曽路には妻籠宿や奈良井宿など、江戸時代の面影を残す宿場町が今も残されています。
戦国時代には武田信玄や上杉謙信、織田信長などの著名な武将たちが激しい攻防を繰り広げた地でもあり、松本城や上田城などの城跡が残されています。特に国宝松本城は、現存する五重六階の天守としては日本最古の城のひとつです。
文化面では、真田氏にまつわる歴史や、穂高神社など歴史的な神社仏閣も多く存在します。また、江戸時代に発展した養蚕業や製糸業の文化も信州の特徴で、富岡製糸場（群馬県）と並んで日本の近代化に貢献しました。
また、石川啄木や島崎藤村など多くの文人墨客が信州に滞在し、その自然や風土を作品に描いています。木曽福島の「木曽路はすべて山の中である」で始まる島崎藤村の『夜明け前』は有名です。
気候と地形の特性
信州は内陸性気候の特徴を持ち、夏と冬、昼と夜の寒暖差が大きいのが特徴です。この気候条件が果物などの農産物の生育に適しており、りんごや桃、ぶどうなどの果物の生産が盛んです。
また、標高差が大きいため、同じ県内でも場所によって気候条件が大きく異なります。北部の野沢温泉や飯山などは豪雪地帯である一方、南部の飯田や駒ヶ根などは比較的温暖な気候です。
地形的には、急峻な山々と盆地が交互に現れる変化に富んだ地形を持っています。松本盆地、長野盆地、諏訪盆地、伊那盆地などの盆地では古くから農業が営まれ、独自の文化が育まれてきました。
さらに、断層による地殻変動が活発な地域でもあり、糸魚川-静岡構造線などの大断層が通っています。これに伴い、温泉も多く湧出しており、白骨温泉、野沢温泉、上諏訪温泉など、多様な泉質の温泉が県内各地に点在しています。
三大秘境を訪ねる
信州には人里離れた美しい秘境と呼ばれる地域があります。特に「信州三大秘境」と呼ばれる場所は、自然愛好家やハイカーの間で人気があります。
秋山郷（あきやまごう）は長野県と新潟県の県境に位置する山間の集落で、苗場山の麓に広がり、清流と深い森に囲まれた美しい景観が特徴です。特に布岩（ぬのいわ）の滝や赤石岳などの景勝地があります。秋には紅葉が美しく、冬は深い雪に閉ざされる秘境です。中津川渓谷沿いの道は「日本の道百選」にも選ばれています。
遠山郷（とおやまごう）は長野県飯田市南部の山深い地域で、和田峠と兵越峠の間に位置しています。清流「遠山川」沿いに集落が点在し、下栗の里は「日本のチロル」と呼ばれる山村集落で、南アルプスを望む絶景スポットとして知られています。また、霜月祭りなど独自の民俗文化も残されています。
木曽路（きそじ）の奥地、特に木曽川の源流域も信州の秘境として知られています。鎌倉時代から伐採が制限された「木曽五木」（ヒノキ、サワラ、アスナロ、コウヤマキ、ネズコ）の美しい原生林が広がり、御嶽山の麓には開田高原など美しい景観が広がっています。
これらの秘境は、現在でも公共交通機関のアクセスが限られており、訪れるには事前の計画が必要です。しかし、その分、人混みを離れた静かな自然を体験できる貴重な場所となっています。
特に近年は「密」を避けた旅行先として注目されており、エコツーリズムやグリーンツーリズムの目的地としても人気が高まっています。
秘境を訪れる際は、地域の自然環境や文化を尊重し、持続可能な観光を心がけることが大切です。また、山岳地帯が多いため、天候の変化に注意し、適切な装備で訪れることが安全のために必要です。
観光スポット
上高地とその魅力
上高地は長野県松本市安曇にある日本を代表する山岳リゾートで、中部山岳国立公園の一部です。標高約1,500mに位置し、穂高連峰や焼岳などの雄大な山々に囲まれた渓谷です。
上高地の魅力は何と言っても圧倒的な自然美にあります。清流梓川のせせらぎ、河童橋から見える穂高連峰の荘厳な姿、田代池や大正池の静かな水面に映る山々の姿など、日本の山岳風景の美しさを凝縮したような景観が広がっています。
特に河童橋は上高地のシンボル的存在で、多くの観光客が訪れる人気スポットです。橋からは穂高連峰を一望でき、四季折々の美しさを楽しむことができます。
上高地では環境保全のため、一般車両の乗り入れが禁止されています。訪問には沢渡または平湯温泉からのシャトルバスを利用するか、松本市内からの直通バスを利用します。この交通規制により、自然環境が守られ、静かな環境で散策を楽しめるようになっています。
上高地では、梓川沿いの遊歩道を歩く軽いハイキングから、明神池への散策、さらには周辺の山々への本格的な登山まで、様々なレベルのアウトドア活動が可能です。また、上高地帝国ホテルや上高地アルペンホテルなど、歴史ある宿泊施設もあります。
観光シーズンは例年4月下旬から11月中旬までで、冬季は積雪のため閉鎖されます。特に新緑の5月から6月と紅葉の10月は最も美しい時期とされています。
諏訪湖と周辺の観光
諏訪湖は長野県中央部に位置する湖で、面積約13.3km²の長野県最大の湖です。標高759mに位置する高地の湖で、周囲には諏訪市、岡谷市、下諏訪町などの市街地が広がっています。
諏訪湖の最大の見どころは、日本最古の神社の一つと言われる諏訪大社です。上社（本宮・前宮）と下社（春宮・秋宮）の四社から成り、全国に約10,000社ある諏訪神社の総本社です。
特に七年に一度の「御柱祭」は日本三大奇祭の一つに数えられ、長さ約17mの巨木を山から切り出し、神社の四隅に建てる壮大な祭りです。
湖の周辺には、霧ヶ峰高原や車山高原などの高原リゾートがあり、夏には涼しい避暑地として、冬にはスキー場として賑わいます。特に霧ヶ峰の八島湿原では高山植物が豊かで、ハイキングコースとしても人気があります。
また、諏訪湖は温泉地としても有名で、上諏訪温泉や下諏訪温泉などがあります。特に上諏訪温泉の「間欠泉センター」では、約40分ごとに湯が噴き上がる間欠泉が見学できます。
諏訪湖では、ワカサギ釣りやボート、水上スキーなどのウォータースポーツも楽しめます。周辺には諏訪湖花火大会や諏訪湖マラソンなどの大きなイベントも開催され、一年を通じて多くの観光客で賑わいます。
さらに、諏訪地域は精密機械工業が発達したことから、オルゴール博物館や時計工房など、ものづくりに関連した観光スポットも点在しています。
軽井沢の人気スポット
軽井沢は長野県の東部、標高約1,000mの高原に位置する日本を代表する避暑地です。19世紀末に外国人宣教師によって発見され、以来、多くの文人墨客や著名人、皇族に愛される高級リゾート地として発展してきました。
軽井沢の魅力は、涼しい気候と豊かな自然、そして洗練された雰囲気にあります。特に旧軽井沢銀座通りは、おしゃれなショップやレストランが並び、散策を楽しめる人気スポットです。
軽井沢プリンスショッピングプラザは日本最大級のアウトレットモールで、国内外の有名ブランドショップが200店舗以上集まり、ショッピング目的での来訪者も多いです。
自然を楽しむスポットとしては、雲場池が特に人気です。四季折々の自然美が水面に映り込む美しい景色は、軽井沢を代表する風景の一つです。また、白糸の滝や碓氷峠などの自然スポットも訪れる価値があります。
歴史的建造物としては、石の教会 内村鑑三記念堂や軽井沢聖パウロカトリック教会など、独特の雰囲気を持つ教会建築が点在しています。また、旧三笠ホテルは日本の近代リゾート史を語る上で重要な建物です。
軽井沢タリアセンやハルニレテラスなどは、自然との調和を重視した建築デザインが特徴的で、カフェやレストラン、ショップが集まる新しい観光スポットとして人気があります。
軽井沢は季節ごとに異なる魅力があります。夏は避暑地として最も賑わいますが、秋の紅葉、冬のスキー、春の新緑と一年を通じて楽しめるリゾート地です。特に冬季は軽井沢スノーパークなどのスキー場が人気を集めます。
東京からは北陸新幹線で約1時間とアクセスが良いことも、軽井沢が人気観光地である理由の一つです。週末や連休には首都圏から多くの観光客が訪れます。
温泉とグルメ
人気の温泉地
信州は日本でも有数の温泉県として知られ、多様な泉質と風情ある温泉地が点在しています。地質学的に活発な地域であるため、様々な特色を持つ温泉が湧出しています。
野沢温泉は長野県北部に位置する歴史ある温泉地で、1300年以上の歴史を持つとされています。13の共同浴場（外湯）が無料で利用でき、地元の人々の生活に密着した温泉文化を体験できます。冬季は野沢温泉スキー場との組み合わせで、スキーと温泉を楽しむ観光客で賑わいます。
白骨温泉は上高地の近くに位置し、乳白色の湯が特徴的な温泉地です。硫黄分と炭酸カルシウムを含む白濁した湯は、別名「白い骨の温泉」とも呼ばれ、その独特の色彩と雰囲気から多くの温泉ファンに愛されています。
渋温泉は長野県北部の山間にある9つの外湯が特徴の温泉地で、「外湯めぐり」を楽しめる場所として人気があります。映画「千と千尋の神隠し」のモデルになったとも言われ、昔ながらの温泉情緒を味わえます。近くには地獄谷野猿公苑があり、温泉に入るニホンザルの姿も見学できます。
その他にも、乗鞍高原温泉、戸倉上山田温泉、湯田中温泉、昼神温泉、別所温泉、鹿教湯温泉など、地域ごとに特色ある温泉地が数多くあります。
信州の温泉の魅力は、その泉質の多様性だけでなく、周囲の自然環境との調和にもあります。山々に囲まれた露天風呂から四季折々の風景を眺めながら入浴できる温泉も多く、温泉と自然を同時に楽しめる点が特徴です。
また、信州の温泉地の多くは、温泉街を形成しており、旅館や土産物店、飲食店などが集まり、温泉情緒を楽しむことができます。日帰り入浴施設も充実しているため、観光の合間に気軽に立ち寄ることも可能です。
信州名物料理とワイン
信州の食文化は、その地理的特性や気候を反映した独自のものがあります。内陸性気候による寒暖差が大きい環境は、様々な食材の生産に適しており、信州ならではの郷土料理や特産品が豊富です。
最も有名な信州の郷土料理は「信州そば」です。長野県は日本有数のそば生産地であり、気候条件がそばの栽培に適していることから、風味豊かな蕎麦が作られています。「戸隠そば」「更科そば」「霧下そば」など地域によって特色が異なり、それぞれの味わいを楽しむことができます。
「おやき」も信州を代表する郷土食の一つです。小麦粉の皮で野菜や山菜、あんこなどの具を包み、焼いたり蒸したりして調理します。家庭や地域によって具材や調理法が異なり、信州の各地で独自のおやき文化が育まれています。
「野沢菜漬け」は信州の代表的な漬物で、長野県北部の野沢地方が発祥とされる大型の葉物野菜「野沢菜」を塩漬けにしたものです。独特の香りと歯ごたえがあり、信州の冬の食卓には欠かせない存在です。
「信州味噌」も全国的に有名です。内陸性気候による寒暖差が大きい環境が、発酵食品である味噌作りに適しており、特に赤褐色で甘みと旨みが強い「信州味噌」は、多くの料理に使われています。
果物も信州の特産品の一つです。りんご、ぶどう、桃、プルーンなどが盛んに栽培されており、特にりんごは「ふじ」「つがる」「シナノスイート」など多くの品種が生産されています。
近年、信州はワインの産地としても注目を集めています。特に長野県塩尻市や上田市などでは、ナイアガラやメルローなどのブドウを使った高品質なワインが生産されています。「信州ワインバレー」と称されるワイン産地としての地位を確立しつつあります。
その他に、「すんき漬け」（木曽地方の乳酸発酵による漬物）、「五平餅」（木曽地方の米を使った郷土料理）、「鯉料理」（佐久地方の名物）、「馬刺し」（信州北部の名物）など、地域ごとに特色ある食文化が発達しています。
周辺県との関係
信州と山梨県の関係
信州（長野県）と山梨県は、共に内陸県であり、甲信地方として括られることもあるなど、地理的にも歴史的にも深い関係があります。
両県の境界には南アルプス（赤石山脈）が横たわり、自然の境界線を形成しています。特に甲斐駒ヶ岳や北岳などの山々は、両県にまたがる山岳観光資源として共有されています。
歴史的には、信州の「信濃国」と山梨県の「甲斐国」は隣接する国として交流が盛んでした。特に江戸時代には、甲州街道を通じて江戸と結ばれ、交易や文化交流が行われていました。
観光面では、両県をつなぐ中央自動車道や中央本線によって、観光客の往来も活発です。特に首都圏からの観光客にとっては、長野県南部と山梨県は連続した観光ルートとして捉えられることが多く、八ヶ岳を中心とした高原リゾートエリアは両県にまたがっています。
産業面では、両県とも果樹栽培が盛んであり、長野県のりんごと山梨県のぶどう・桃は日本を代表する果物の産地です。また、近年ではワインの産地としても両県ともに注目を集めています。山梨県の「勝沼」と長野県の「塩尻」はともに日本を代表するワイン産地として知られています。
両県はまた、自然環境を活かした観光戦略や農業振興など、共通の課題にも直面しています。そのため、行政レベルでの協力や連携も行われています。
ただし、エリアとしては明確に区別されており、「信州」と言えば現在の長野県を指し、山梨県は含まれません。観光プロモーションなどでも、「信州」は長野県のブランドとして使用されています。
信州と群馬県の関係
信州（長野県）と群馬県は、関東地方と中部地方の境界に位置し、浅間山や菅平高原などを含む山岳地帯を介して接しています。
両県の境界には碓氷峠があり、古くから重要な交通の要衝でした。江戸時代には中山道の難所として知られ、現在でも碓氷峠の鉄道施設群としてその歴史的価値が認められています。特にアプト式鉄道の遺構は、土木技術の発展を物語る貴重な文化遺産です。
観光面では、長野県の軽井沢と群馬県の草津温泉が近接しており、関東からの観光客は両方を訪れることも多いです。夏の避暑地としても両県の高原地帯は人気があり、嬬恋村のキャベツ畑と川上村のレタス畑は、同じ高原野菜の生産地として知られています。
歴史的には、真田氏が両県にまたがって勢力を持っていたつながりがあります。長野県の上田市を本拠地としつつ、群馬県の沼田市にも領地を持っていたため、「真田の郷」として両県にその歴史的痕跡が残されています。
産業面では、両県とも高原地帯での高原野菜の栽培やリゾート開発など、類似した産業構造を持っています。また、養蚕・製糸業の歴史も共通しており、群馬県の富岡製糸場（世界遺産）と長野県の製糸業は、日本の近代化に大きく貢献しました。
交通面では、上信越自動車道や北陸新幹線によって両県は直接結ばれており、移動も便利になっています。特に北陸新幹線の開通により、観光客の流動性がさらに高まりました。
しかし、文化的には群馬県は関東地方の文化圏、長野県（信州）は中部地方の文化圏という違いもあり、方言や食文化などに差異が見られます。
両県は隣接しながらも、「信州」という地域名称は長野県のみを指し、群馬県は含まれません。ただし、観光や産業などの面では、県境を越えた協力関係が構築されています。
まとめ
信州とは、現在の長野県の別称です。古代の「信濃国」に由来する呼び名で、現在でも「信州そば」「信州味噌」など、特産品や観光PRの場面で広く使われています。
信州（長野県）は日本の中央部、本州のほぼ中央に位置し、海に面していない内陸県です。周囲を山々に囲まれ、北アルプス、中央アルプス、南アルプスの「三大アルプス」を有することから「日本の屋根」とも呼ばれています。
信州と信濃の違いは、主に使われる文脈の違いで、「信濃」は古代からの国名（信濃国）であり、「信州」はその「州」表記です。現在は両方とも長野県を指す言葉として使われています。
信州の特徴は、豊かな自然環境と山岳リゾート、温泉、そして歴史的な街並みなど多様な観光資源を持つことです。上高地や軽井沢、諏訪湖などの有名観光地に加え、秋山郷、遠山郷、木曽路の奥地などの「三大秘境」も魅力的な訪問先です。
信州の食文化も豊かで、信州そばやおやき、野沢菜漬け、信州味噌など独自の郷土料理が発達しています。近年ではワインの産地としても注目を集めています。
現在、信州（長野県）は北信・東信・中信・南信の4つの地域に分けられ、それぞれが独自の文化や特色を持っています。山梨県や群馬県など周辺県とは歴史的にも地理的にも関係が深いものの、「信州」と言えば、現在の長野県のみを指す地域名称となっています。
信州は四季折々の美しい自然と歴史・文化を楽しめる地域であり、東京や名古屋などの大都市からのアクセスも良いことから、国内外から多くの観光客が訪れる人気の観光地です。豊かな自然環境を生かした持続可能な観光地として、今後も発展が期待されています。
